宮崎県の河野俊嗣知事は、全国知事会を代表し、19日に自民党と公明党の税制調査会幹部と面会し、物価高対策を含む経済政策についての要望書を手渡しました。その中で、「103万円の壁」の見直しに伴う地方財源への影響について慎重な議論を求めました。
地方税収への懸念
「103万円の壁」とは、年収が103万円を超えると所得税が課され始める現行制度を指します。この壁がパートやアルバイト労働者の働き控えを招いているとの指摘がありますが、同時に壁の引き上げによる地方税収の減少も懸念されています。
河野知事は「地方自治体の税収減が地方行政サービスの運営に影響を及ぼす」と述べ、引き上げに際して十分な配慮を求めました。政府の試算では、壁を178万円に引き上げた場合、国と地方合わせて最大で7兆~8兆円の税収減少が見込まれ、そのうち地方税分は約4兆円にのぼるとされています。
これに対し、自民党の宮沢洋一税調会長は「課題にしっかり取り組み、適切な解を見つける必要がある」と応じ、国としての検討姿勢を示しました。
地方の声と労働現場の課題
また、河野知事が「103万円の壁」を議論の中核に据えた背景には、現場からの切実な声があります。宮崎市のスーパーで人事を担当する黒木俊一氏は、「年収の壁を理由に勤務時間を調整せざるを得ない従業員が多く、その結果、人手不足が生じている」と語ります。一方で、働き手の間では「もっと働きたい」という声も上がっており、壁の緩和が労働環境の改善に寄与する可能性があります。
国民生活と政策のバランス
物価高が続く中、手取り収入の増加を求める声は広がっています。生活者にとっては、壁の引き上げが家計を支える助けになるとの期待がある一方、地方自治体にとっては税収減が避けられない現実があります。政策決定の過程では、こうした多様な視点をどう調整するかが大きな課題となります。
「103万円の壁」を巡る議論は、国と地方、そして生活者それぞれにとって重要なテーマです。今後、どのような形で落としどころが見つかるのか注目が集まります。